タグ: 映画『Ⅰ秒先の彼女』

  • 映画『星空のむこうの国』

    映画『星空のむこうの国』


    映画『星空のむこうの国』

    (C)映画『星空のむこうの国』製作委員会

    最後の数カットがこの映画のキモで、ここで観客は、ああよかったと思う。ただし、そこにいたるまでは、低レベルの作り。
    俳優の演技のバランスが悪い。例えば、若い医師役の俳優がなぜこれほどテンションが高いのかは不明。
    複数の俳優が絡む場面では心情のレベルでかみ合っていない。
    ただし、最後の数カットでこの映画は成立したので、大まかにサマライズすると、二つのパラレルワールドを舞台として切ない若い恋のやり取りがある、が、実は第三のパラレルワールドで明るい未来を予想できる、という筋書きだ。
    シリウス流星群がきっかけ、という設定に出会ってしまったとたんに、陳腐な既視感が醸し出されるのが残念だ。

    (h.s)

    監督 小中和哉
    公開 2021年7月

    © 2021.Hiroshi Sano


  • 映画『共謀家族』は人間臭いがドライ!

    映画『共謀家族』は人間臭いがドライ!


    映画『共謀家族』

    ちょっとしたパズル感覚があるので、映画好きは引き付けられやすい筋立てだ。
    タイに住むある一家に起きる事件だが、主人公はもともとは中国からの移民だ。働きもので、町の人々からは信頼されている。そのあたりの生活の様子は、タイが舞台だとなかなか悟れないのでややまとめきれない印象だ。
    事件が起きて、家族が真相を隠すためにまとまる、といったところから一気に物語は進んでいく。
    映画好きの主人公が、これまでに観た犯罪映画の知識を駆使して、警察の尋問をかいくぐって行く場面が、この映画の見どころとして設定されている。
    この映画を観る側も、ある程度の映画好きならば、とても共感できるようなシーンが連続する。
    取り調べるのはこわもての女性の警察署長で、実は、事件の発端である、一家に殺された青年は、実はこの女性が母親として甘やかして育てた実の息子という設定だ。この青年に暴行された娘の一家と、女性署長の対立がつよい感情の対立軸になって、終盤にむけて、生の対立にまで昇華する。
    もともとのインド映画のリメイクだということだ。リメイクにありがちな、ぎこちなさがひょっとして残っているのかもしれないと感じさせるところもある。
    生の人間の生死の対決や、民衆の暴動も巻き込んだ設定など、知的な謎解き風の展開なども含めて、なぜか、黒沢明を連想させた。
    隣人に愛されて、人のよい父親が、やがて理性に支えられた強い意志をもった存在へと変貌していく。そうした隠れたドラマもあるのだが、すじだてのかまびすしさに紛れているのがもったいないと言えるかもしれない。

    監督 サム・クァー
    公開 2021年7月

    © 2021.Hiroshi Sano


  • 映画『アジアの天使』は出たとこ勝負か?

    映画『アジアの天使』は出たとこ勝負か?


    映画『アジアの天使』

    『アジアの天使』はガタピシしていた出だしがだんだん落ち着いてきて、恋愛ドラマに収れんしていく映画。
    一応「アジアの天使」が登場するので、看板は偽っていはいない。しかしでこぼこ感はずっとつづくので、ふさわしい題名は何だ、とか、三題噺ではないだろうか、とか、没入しきれないで観てしまうきらいはある。
    主役の池松壮亮は感情を爆発させる場面は違和感があった。いづれも主題(たぶん他者を大切にする愛情)とは関係ない場面だったので主人公のエキセントリックさを強調するだけに終わった。
    オダギリジョーは、(おそらく)アドリブのシーンでハシャギ過ぎが鼻についた。
    一方韓国の俳優はいづれも見事で魅力があった。
    しかし、ガタピシした感じはやがてこの映画の豊な可能性として余韻を残していく。
    ストーリーは日本人の兄弟が、韓国人の家族とたまたま同じ列車に乗り合わせて、その墓参りについていくというもの。連れの子どもがオシッコをしたくなったり、韓国人のヒロインがお腹が痛くなったり、韓国人のおばさんの家で歓待されたりする。途中ヒロインが 所属する芸能プロダクション社長とのつらいエピソードが入ったりする。
    いちおう映画の社会性を担保する骨組みの要素(妻の死、悪徳芸能プロ社長、つらいソウルでの生活)は入っている。
    しかし、映画のメインの旅自体には、韓国の家族の側にも、日本人の側にも、理由も必然性もなかったことが明かされる。
    だから、出来事の断片をつなぎ合わせた、だけ、という痕跡をのこしつつ、じつはこれこそが映画の隠れたテーマだったりする作品だ。
    そういういみでは、オダギリジョーのハシャギ過ぎのアドリブは、映画全体の意味を暗示している。
    唐突なお笑い芸人のような天使ももう一つの隠れたテーマだ。
    誤解を恐れずに言えば、出たとこ勝負を力業でまとめあげた映画、と言えると思う。ここには洗練はないが、可能性はたしかにある、という意味で、観た後、腑に落ちた。

    (h.s)

    ©hiroshi sano

    監督 石井裕也
    公開 2021年7月

    評価
    4/5

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    https://youtu.be/ld0C39UiAO8

    © 2021.Hiroshi Sano

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    © 2021.Hiroshi Sano


  • 映画『コンティニュー』はすごいSF 原題Boss Level

    映画『コンティニュー』はすごいSF 原題Boss Level

    紅茶とりんご

    (C) 2019 Georgia Film Fund 72, LLC All Rights Reserved

    映画『コンティニュー』

    凄い映画。アクション映画であり、ミステリーであり、親子のホームドラマであり、世界を破壊する先端装置のSF映画でもある。そのすべてをひっくるめて破綻がない。
    主人公が同じ出来事を繰り返してしまう、というループものは、すでにすぐれた作品がいくつかあるが、この映画を際立たせているのはユーモアだ。このユーモアは、映画の中にも出てくる「ストリート・ファイター」のなどのテレビゲームのように、倒されたものが何度でもよみがえるといった、ゲームという枠の軽み、をベースにしているので、シリアスなシチュエーションを娯楽の高みに押し上げることに成功している。
    主人公が何度も死ぬのだが、その死にバリエーションをつけるのも残虐だが、主人公が何度目かにいろいろ気づくことが出てくるので、ある意味、複線としてだ。
    死ぬたびにゲームのようにリセットされるが、毎回同じというわけではなく、その違いの中から、ループの引き起こすある出来事の解明にたどり着く。
    その解明はミステリー映画のように、主人公と一緒に見る側も体験するようになっている。
    主人公は腕利きの元工作員で、妻と子を顧みずに戦場を住処としてきた男だ。そして、最後に対決する悪の棟梁も幾多の戦場を経験した元工作員だ。
    この映画は、ゲームや、謎解き、父と子の再会、元妻との感情の交流、元工作員同士の対決、世界の終わり、その他、といった様々な要素を上手にまとめ上げている点で、出色だ。
    その成功に要因は、悪の棟梁役のメル・ギブソンと元妻役のナオミ・ワッツだったと思う。
    SF映画として成り立たせているのは、通常、ループを成り立たせている科学装置のはずだ。その真実味をビジュアルにたよらずに、この二人の俳優だけで成立させているが、驚きだった。
    もちろん主人公のフランク・グリロも適役だったと思う。

    (h.s)

    ©hiroshi sano

    監督 ジョー・カーナハン
    公開 2021年6月

     

    評価
    4.7/5

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    映画『コンティニュー』

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