佐野 ヒロシ
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映画『ステージ・マザー』
母親役のジャッキー・ウィーバーが好演。
道具立ては、万全。
ゲイだった息子が急死して、テキサスからサンフランシスコに駆け付ける母親。息子はショーパブを経営をしていて、そこには人生の苦悩を抱えたゲイたちがいた。
母親は、一計を案じて、ショーパブを立て直す。ゲイたちの相談にも乗ってやり。
とここまでは、よくありそうなコメディーの筋立て。
ところが、母親は、テキサスの小さなコミュニティーで教会の聖歌隊の指導者だった、というのが、最後まで効く、バネになっている。
最後の最後で、母親自身のステージが実現する。これが感動のピークとなっている。
このわずか数分のために、それまでの、なんだかんだがあったような、そんな稀有な映画。
(追記) つらつら考えると、出だしの、タイトルバックと、サンフランシスコの紹介が、音楽のリズムにあわせてシャレていて、そこで、すっかり観る側の期待感を掻き立てるのに成功したと、思う。
その期待度の高さで、中盤の、ゲイたちに地声で歌わせるシークエンスの盛り下がりを乗り切れたのかもしれない。
盛り下がりのあやうさは、そちこちにあったが、ちいさなエピソードの配置でくい止めている。そして嫌味なく乗り切れているのは、ひとえに、クリッとした瞳の主人公の顔のアップにあったと思う。
そして、最後の最後のシーンにまで、なんとかもっていくわけだが、そこには、監督と脚本の力技が多分効いていた。
映画のテーマは、テキサスの小さな町で育ち、幸せな青春をおくった、と思った主人公が、「いつも刺激的」なサンフランシスコで、60代(多分)になって、秘めていたもう一つの青春を爆発させる、ということだったと思う。
気持ちが揺さぶられるシーンのある映画ではあるが、感動がこころの底から湧き上がることはない。なぜなのか知りたくはあるが、あまりにも多すぎる人生のしがらみや苦悩をつきぬける、力が主人公にも制作がわにも欠けていたのかもしれない。
(h.s)
監督 トム・フィッツジェラルド
公開 2021年2月
評価
3.8/5
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