佐野 ヒロシ
映画『ジョーカー』
この映画を見て、何か不満を感じる人は、では映画にいったい何を求めるのだろう、という自問に陥ることになる。
印象に残る秀逸な場面はジョーカーと、ロバート・デニーロが演じるショーの司会者とのテレビスタジオでのやり取りの場面だろう。蔑視なのか敬意なのか、緊張したテレビの時間のなかで、虚実の入り混じったデニーロの受けの偽善の演技が素晴らしい。
しかし、偽善はあっけなく銃弾で倒れ、ゴッサムシティーの悪の象徴が誕生するのである。
結局、悪にたおされる偽善、をこの映画ではこった映像と演技で見せらることになる。
映画になにをもとめるかは、人それぞれだが、カタルシスがあるわけではないし、想像をかきたてるわけでもないので、『記憶にございません!』の反対の意味で映画であって映画でない、というのが私の印象である。(hs)
監督 トッド・フィリップス
公開 2019年10月
評価
3.2/5
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