(C) 2021『あなたの番です 劇場版』製作委員会
クリスティの「オリエント急行殺人事件」のような、密室殺人事件を思わせるような趣向の映画だが、眼目は殺人の方法よりは、犯人と動機。
原案の秋元康の作品は、「NG」というテレビドラマが面白かったので、この映画も期待して観に行った。舞台は外洋に出れる大きな船の中。
シリアスな推理ものではなくて、密室殺人をネタにした、ハチャメチャ劇に近いが、すごいところは、きちんと整えるべきところは整えていること。狂言回し役の田中圭もあと少しで過剰、というレベルで抑えられていた。
多用な人物が登場するが、ちょうど将棋の駒のように役割を与えられていて、全体の枠にきちっと収められている。たとえば、犯人には特異な性癖があるが、それを説明する駒役がいるといった具合。
この映画の予告編にはまったく食指が動かなかったが、本編には安易さがなかったのは意外だった。ご都合主義的な駒もあったがそれも必要。
冒頭の険悪なマンションの管理組合の会合から、なぜ急にそのメンバーが船上の結婚式パーティーにいるのかも、映画にとってはなんでもアリの切り札だと教えてくれる。気楽に観ればいいのだ、という思いで席についたが、最後まで裏切られることなく観れた。
©hiroshi sano
監督 佐久間紀佳
公開 2021年12月