カテゴリー: 映画

  • 映画『ジョジョ・ラビット』

    映画『ジョジョ・ラビット』

    佐野 ヒロシ

    映画『ジョジョ・ラビット』

    コメディなのだと思う。しかし、シリアスで深いテーマをなげかけてくる、素晴らしい映画だ。

    俳優たちがそれぞれの持ち味を100パーセント活かして、人間味あふれる演技をしいてるのも、観ていて楽しい。

    中心にいるのは、ヒトラーに取りつかれた軍国少年、とヒトラーの幻影だ。少年の配置が、というか設定がすばらしい。ヒトラー役は、この映画の監督でもある、コメディアンのワティティ。

    少年のお母さん役の、スカーレット・ヨハンソンがなんとも言えない、味わい深い演技をしている。さらに、大尉役のサム・ロックウェルが多少ずれた、いい役を演じている。

    そして、展開がすばらしい。かなしくて、希望に満ちている。

    すばらしい、としか言えなくて、おかげで、しばらくの間、映画について、語れなくなってしまった。

    (h.s)

    監督 タイカ・ワティティ
    公開 2020年1月

    評価
    4.8/5

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  • 映画『43年後のアイラブユー』

    映画『43年後のアイラブユー』

    佐野 ヒロシ

    映画『43年後のアイラブユー』

    アルツハイマーになってしまった初恋の女性を追って、自分から老人ホームにはいる、70代の男性のプチ・アバンチュール!

    類似の映画はいくつかあって、私が思い出したのは『きみによむ物語』。

    高齢のカップルであることは両映画とも同じだが、『きみに』の方はストレートに夫婦で、妻は記憶をなくしている。そして美しい青春時代の展開がメインの映画。

    一方、この映画は、主人公の現在がメインのドラマで、いろいろちょっとひねってあって、とても楽しめるようになっている。(ということは、アルツハイマーへの理解も深まって、余裕ができてきた、ということかもしれない)

    まずは、この初恋の相手は、女優で、しかも人妻。男性自身の家族関係のひねりもうまく絡み合って、軽いノリで楽しめる映画になった。

    (h.s)

    監督 マルティン・ロセテ
    公開 2021年1月

    評価
    3.6/5

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  • 映画『きみの瞳(め)が問いかけている』

    映画『きみの瞳(め)が問いかけている』

    佐野 ヒロシ

    映画『きみの瞳(め)が問いかけている』

    事故で視力をうしなった役を吉高由里子が演じている。いつも立ち寄って、おしゃべりする駐車場ビルの管理室で、その日たまたまいあわせた元ボクサー役の横浜流星とであう。

    二人のそれぞれの過去と、困難な現実が紹介され、次第に、ある結びつきがあるのが、分かる。

    いろいろドラマチックな仕掛けがあって、シーンごとにはそれなりに見入るが、全体をとおしての印象が立ち上がってこない。なぜだろう。

    むしろ、個々に、ドラマチックすぎるのかもしれない。

    遠景で、さりげなく、ふたりとも汗などかかないようなトーンで、物語がすすんでいった方が、ドラマチックで素敵な映画になるようなきがした。

    どの映画でも、すてきな風吹ジュンが、はじめてミスキャストな彼女をこの映画でみてしまったきがした。

    (h.s)

    監督 三木孝浩
    公開 2020年9月

    評価
    3/5

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    © 2019.Hiroshi Sano

    (著作権)オリジナル画像の著作権の侵害を意図するものではありません。

  • 映画『思い、思われ、ふり、ふられ』

    映画『思い、思われ、ふり、ふられ』

    佐野 ヒロシ

    映画『思い、思われ、ふり、ふられ』

    浜辺美波が出ている、映画。

    ふられる、ということに、意味があるのでは、というテーマの映画らしい。

    散漫な印象だが、浜辺も北村も実年齢に近いので、なんとなく、痛さとかむずがゆさは、伝わってくる。

    と、ヒドイ評だが、じつは、この監督の映画「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」が大好きだ!

    (h.s)

    監督 三木孝浩
    公開 2020年8月

    評価
    3/5

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    © 2019.Hiroshi Sano

    (著作権)オリジナル画像の著作権の侵害を意図するものではありません。

  • 映画『ヲタクに恋は難しい』

    映画『ヲタクに恋は難しい』

    佐野 ヒロシ

    映画『ヲタクに恋は難しい』

    高橋充希ワールド(全開とまではいかないが、)満開の映画!

    ヲタクをなぜか、オクテと無意識に置き換えて、自分のことだと、まず楽しめる。

    さらに、わかりにくいヲタクワールドとは、どんなものなのか、おもしろおかしく楽しめる!いろいろ未知の世界をしれて、お得な映画。

    (h.s)

    監督 福田雄一
    公開 2020年2月

    評価
    3/5

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    © 2019.Hiroshi Sano

    (著作権)オリジナル画像の著作権の侵害を意図するものではありません。

  • 映画『町田くんの世界』

    映画『町田くんの世界』

    佐野 ヒロシ

    Ⓒ安藤ゆき/集英社 Ⓒ2019 映画「町田くんの世界」製作委員会

    映画『町田くんの世界』

    ほとんど印象に残らない映画だった。

    出演者は脇役に、高畑充希、前田敦子、池松壮亮、戸田恵梨香、松嶋菜々子、佐藤浩市、と考えられないくらい超豪華(というか、バラバラでもある)!

    そもそも主人公は、超善良の設定。だが、存在が薄い!

    たぶん、その薄さを描きたかったのでだろう。その証拠に、後半、主人公は風船とともに飛んでいく!

    で? ひっかかる人はひっかかるんだろうな?!

    (h.s)

    監督 石井裕也
    公開 2019年6月

    評価
    2.4/5

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    © 2019.Hiroshi Sano

    (著作権)オリジナル画像の著作権の侵害を意図するものではありません。

  • 映画『盲目のメロディー インド式殺人協奏曲』

    映画『盲目のメロディー インド式殺人協奏曲』

    佐野 ヒロシ

    映画『盲目のメロディー インド式殺人協奏曲』

    最後まで見ると、イントロの映像とうまくマッチしたエンディングで、しゃれたつくりになっている。だが、真ん中のあんこの部分が問題だ。
    盲目と偽ったピアニストが、殺人現場に居合わせてしまうシーンは何かが欠けてもったいない印象だ。
    ストーリーはどんでん返しの連続で、かつ、ほどよいインドの世相も分かって興味がもてる。
    しかし、せっかくの面白いプロットの展開が、だるい演出で精彩をそがれてしまった。
    詳しく書くと、長大になりそうな予感がするので、短く切り上げるが、同じような情景をいつか見たような気がした。日本の映画にもかつて、こんな不具合があった。インド映画にはインドの観客を喜ばせる定型があると思う。必ず歌と踊りが出てきて、主演俳優がしつこいほどアップになったりする。それはそれで、「インド流」として日本でも楽しめる。しかし、この映画は本格的な、どの国でもうけいれられる普遍的な体裁の「娯楽映画」になっている。なのに、インドの観客向けサービスの尻尾がついている。
    誤解してほしくないが、インドの世相が描かれているのとは別である。
    俳優は優秀だ。ストーリーやプロットも秀逸だ。だが、しつこいインド流が、まどろこしい演出となって、もしかしたら黒沢明になれたかもしれない映画を阻害してしまった。
    短く言えば、「土着映画」から「普遍的映画」への中間作品だ。
    これは忘れずに付け加えると、主人公の一人、タブーという名の女優の演技は素晴らしかった。
    (h.s)

    監督 シュリラーム・ラガバン
    公開 2019年11月

    評価
    3/5

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  • 映画『殺さない彼と死なない彼女』

    映画『殺さない彼と死なない彼女』

    佐野 ヒロシ

    映画『殺さない彼と死なない彼女』

    監督のセンスの良さが、最後まで力強い。ツーショットで会話がつづくシーンの繰り返しも面白い。たぶん原作の力か、高校生という人種の生態がこまかくリアルに拾われていて、いやみがない。
    なぜか、ぼやけさせた画像が長いのが、不必要で疲れる。
    しかし、総てをひっくるめて、かなり質の高い青春映画だ。
    『カメ止め』は、センスが悪い、そして、プロットの意外性一本槍なのに比べると、まったく正反対だが、面白く興奮する映画だ。
    (撮影に詳しそうな監督、ということで、なるほどと思わせるところが多々ある。ただし、新人がおもちゃをいじくっているようなところがあって、味付けにはなっているが、粗すぎ。音声の処理もイマイチ。ただし、その総てをひっくるめて、才能の噴出に出会ったような快感があった)
    とここまで書いて、静かに振り返ると、「八千代君」、「キャピ子」、「死なない彼女」の3つの物語の合成だと分かる。「死なない彼女」がメインのストーリーとなっているが、他のふたつがあるおかげで、全体に深みがでている。原作はSNS漫画家(?)の『世紀末』氏。きつい会話がほのぼのとした線の漫画で展開する。この映画は、その「きつい会話」と「ほのぼのとした漫画」の間の実写として奇跡的に成立している。
    セリフはどうも、原作からそっくりとっているようだ。ただし、原作はショートストリーリの集合なので、映画として長尺な作品に完成させた手腕は監督のものだ。
    登場人物がそれぞれ生きている。それに原作者の世紀末氏、それに監督の小林氏、のごちゃまぜ感がこの映画の魅力を高めている。いまから考えると「細部が生きている」、とでも表現したい映画だ。
    (hs)

    監督 小林啓一
    公開 2019年11月

    評価
    4.5/5

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  • 映画『スペシャルアクターズ』

    映画『スペシャルアクターズ』

    佐野 ヒロシ

    映画『スペシャルアクターズ』

    『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の第2作(正確には、この前にオムニバス作品がひとつあるので2.5作目)。言い方に迷うが、作品の質感が低くて難アリだが、観る価値的に言えば『ジョーカー』よりも価値のある映画。
    合計で4回くらいダマスことになるが、プロットの展開は上田監督ならではの才気十分。
    ただし、はじめから学芸会芝居で、最後のオチでその学芸会芝居を納得させるかというと、残念ながら、ひとつミスをしている(と思う)ので、ストンと納得にはいたらないので、残念な印象になっている(実質2作目のオムニバスでは、学芸会芝居をなっとくさせるオチがあった)。
    しかし、上田監督が成し遂げた快挙にはいまだに祝祭的な高揚がただよっているので、そんな雰囲気の中で観れば、カナリおもしろいのではないだろうか。
    すくなくとも『ジョーカー』よりは価値のある映画だ。
    (h.s)

    監督 上田慎一郎
    公開 2019年10月

    評価
    3.6/5

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  • 映画『ジョーカー』

    映画『ジョーカー』

    佐野 ヒロシ

    映画『ジョーカー』

    この映画を見て、何か不満を感じる人は、では映画にいったい何を求めるのだろう、という自問に陥ることになる。
    印象に残る秀逸な場面はジョーカーと、ロバート・デニーロが演じるショーの司会者とのテレビスタジオでのやり取りの場面だろう。蔑視なのか敬意なのか、緊張したテレビの時間のなかで、虚実の入り混じったデニーロの受けの偽善の演技が素晴らしい。
    しかし、偽善はあっけなく銃弾で倒れ、ゴッサムシティーの悪の象徴が誕生するのである。
    結局、悪にたおされる偽善、をこの映画ではこった映像と演技で見せらることになる。
    映画になにをもとめるかは、人それぞれだが、カタルシスがあるわけではないし、想像をかきたてるわけでもないので、『記憶にございません!』の反対の意味で映画であって映画でない、というのが私の印象である。(hs)

    監督 トッド・フィリップス
    公開 2019年10月

    評価
    3.2/5

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