カテゴリー: 日本映画

  • 映画『スペシャルアクターズ』

    映画『スペシャルアクターズ』

    佐野 ヒロシ

    映画『スペシャルアクターズ』

    『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の第2作(正確には、この前にオムニバス作品がひとつあるので2.5作目)。言い方に迷うが、作品の質感が低くて難アリだが、観る価値的に言えば『ジョーカー』よりも価値のある映画。
    合計で4回くらいダマスことになるが、プロットの展開は上田監督ならではの才気十分。
    ただし、はじめから学芸会芝居で、最後のオチでその学芸会芝居を納得させるかというと、残念ながら、ひとつミスをしている(と思う)ので、ストンと納得にはいたらないので、残念な印象になっている(実質2作目のオムニバスでは、学芸会芝居をなっとくさせるオチがあった)。
    しかし、上田監督が成し遂げた快挙にはいまだに祝祭的な高揚がただよっているので、そんな雰囲気の中で観れば、カナリおもしろいのではないだろうか。
    すくなくとも『ジョーカー』よりは価値のある映画だ。
    (h.s)

    監督 上田慎一郎
    公開 2019年10月

    評価
    3.6/5

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  • 映画『記憶にございません!』

    映画『記憶にございません!』

    佐野 ヒロシ

    映画『記憶にございません!』

    バランス抜群の小気味よい喜劇!
    多くの人がすでに観たと思うので、いまさら批評めいたことを書く必要もないが、それでも一言いいたいのは、ヤフーの評価点数が、やや低いと感じたからだ。
    そして、そこにこそ、この映画の屈折した面白みがある。
    脇道にそれるが、俳優は、木村佳乃のアメリカ大統領と通訳(宮崎エマ)が出色。このあり得ない超リアリティーに、ハラハラして笑う初めての体験をした!(最新ゴジラで、石原さとみの同じ役柄は酷かった!)
    本題にもどると、控えめなカメラワークと、使いまわしのようなセット、そのすべてが語るのが、(たぶん)三谷幸喜のアンチ映画手法だ。かいつまんで言えば、映画であって映画でない、この面白さ。たぶん、「映画」を観に行った人たちは、違和感を感じて、低めに点をつけたように思える。 (hs)

    監督 三谷幸喜
    公開 2019年8月

    評価
    4.4/5

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  • 映画『柴公園』

    映画『柴公園』

    佐野 ヒロシ

    映画『柴公園』

    柴犬を連れた男三人がつどうので、彼らが勝手に「柴公園」と名付けた。
    ま、それはいいとして、ひょっとしたら、この映画は傑作なのではないか、と今思っている。
    女性の描き方にこだわりを感じたので、ひょっとして、女性監督かな、と思ったが、男のようだ。
    話の展開は、前半、コントのようで、テンポがよく、観ながら「これは買いだ」と思わせる展開だった。
    後半、まったく違う展開で、引きこもり気味の女性との恋愛物語になる。
    監督は、これを謎解き方式で展開しようとして、フラッシュバックを多用したが、後半一部失敗した。しかし、にも関わらず、意外と腰のつよいメッセージが伝わってきて、社会性も感じられる、好印象の映画になった。
    ただ、主役はやや、難アリで、魅力にかける。思い切って、福山雅治でもよかったのではないか。
    いまにも破たんしそうな映画展開を感じるかもしれないが、意外に尖った部分があちこちあって、映画は面白いと感じさせてくれた。

     

    (hs)

    監督 綾部真弥
    公開 2019年6月

    評価
    4/5

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  • 映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女のゆめを見ない』

    映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女のゆめを見ない』

    佐野 ヒロシ

    映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』

    周りがプラスの要素ばかりで囲まれている、少年の恋愛物語の顛末。
    登場人物は主人公と、主人公に好意をもつ女子ばかり。しかも、主人公の高校生は、なんと、先輩で、卒業後タレントになっている美女子に愛されている、ばかりか、一緒に暮らしている。
    食卓に、ショートケーキと、アイスクリームと、マシュマロと、プリンがのっているような感じ。
    時間が平行したり、交差しているらしくて、悲劇的な未来も、やり直しでなんとか妥当な結末にたどり着けるらしい。
    肉欲に直結するような匂いは皆無で、会話はプラトニックなものばかり。
    このラノベの原作シリーズが好評らしい。今時の少年たちの夢とあこがれであるようだ。
    と見下したような書き方だが、ここちのよい世界であるのは確かだ。
    映画館は、一人をのぞいて、少年や青年でいっぱいだった。(hs)

    監督 増井壮一
    公開 2019年6月
    原作 鴨志田一

    評価
    3.3/5

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  • 映画『潮騒』主演吉永小百合

    佐野 ヒロシ

    日本映画の「愛」はなんだ その1

    映画『潮騒』 主演吉永小百合

    日本映画の「愛」について、がぜん興味がわいてきた。愛と言えば、なんとなく吉永小百合が見たくなって、『潮騒』をDVDで観た。 『潮騒』は、若い男女が衣服を脱いで向き合う、というのがお決まりの映画で、ほかに山口百恵主演やいくつかバージョンがあるらしい。

    ちいさな島が舞台である。若い初江と新治の物語である。浜で働く初江を初めて見て、新治は好きになる。初江も好意をもつ。新治は少年の初々しい気持ちを残した漁師だ。ある日、島の廃屋で偶然二人は会って、再会を望むが、嵐の日に会おう、と約束する。嵐になれば、新治は漁に出なくていいからだ。とここまでが、前半だ。

    さて、その日から新治は天気が気になってしょうがない。漁師なら嵐はいやなはずだが、嵐が来そうにないとがっかりする新治、というコミカルなシーンがあって、いよいよ嵐の日がやってきた。

    ここから第一のクライマックスがやってくる。早めに着いた新治は待ち疲れて、たき火をしたままうとうとと寝てしまう。嵐の中を遅れてやってきた初江は全身雨にあたってぐっしょり濡れている。たき火を見つけると、さむさに震える初江は服を脱いで乾かそうとする。薪の陰で寝ている新治は、初江に気がつくが、その裸のすがた(たぶん美しい)にびっくりして立ち上がって近づこうとする。すると初江は、来てはだめだと言う。なぜか、と新治が問うと、恥ずかしい、と答えが返った。では、どうしたら恥ずかしくないか、と問うと、新治にも裸になれ、と言う。

    新治は上半身を裸になるが、初江は、それでは不十分だ、と言うのである。そこで、新治は下をとる。新治はもじもじする。すると、おどろくなかれ、初江は新治にむかって、足元の火を飛び越えて、来い!、というのである。新治は飛び越えた。(中略  愛について考察するには、このあとの驚くべき展開をあらすじごと書かなければならないのに気が付いた。)
    (中略 これほど手ごわい映画ははじめてだ。たぶん原作がしっかりしているからだろう。)
    この後二人は、愛をはぐくむのだが、世間(島の人々)の干渉(?)を乗り越えなければならない。
    二人が夜陰に山道から降りてくるのを目撃した、灯台守の娘が、初江の婚約者に、告げ口をする。島の子どもたちが、二人は出来ている、とはしゃいで島中を駆け巡る。初江は婚約者に、犯されそうになる。(つづく)

    (hs)

    監督 森永健次郎
    公開 1964年4月

    評価
    4/5

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