映画『燃えよ剣』

原作は司馬遼太郎。
映画は岡田准一扮する土方歳三の回想から始まる。桜田門外の変をさかいに明治維新前後の、激動の時代に突入していく。
その時代、今の東京都日野市に生まれ育った土方がやがて近藤勇と知り合い、侍になりたい一心で剣の腕をみがき、幕臣に登用され、新選組で活躍し、やがて逆賊として官軍に追われて北海道で最後を迎える。
新選組が関わる池田屋事件、蛤御門の変、大政奉還、戊辰戦争、ほとんどのイベントが年号付きで描かれていく。
原作がしっかりしていそうなので、土方の生い立ちから、歴史的イベントにいたるまで、安心して観ていられた。
しかし、全体のバランスの良さをみると、原田監督の力技がすごかったのではないかと思わせる。
岡田准一をはじめ、ほとんどの俳優が、きっちり役柄にはまってもいて、それの見どころになっていた。
ただ、正直いって、安心して観てはいたものの、幕末の政変の複雑な事情の説明は、ほとんど理解できなかった。尊王攘夷の内実がどんどん変わっていったり、朝廷の変節など、こみいった歴史的な叙述があるが、こちらの理解が追い付かないはやさで映画は進んでいた。
しかし、繰り返すが、骨組みの堅固さは感じられたし、突出した感情の起伏もなく、岡田准一も過剰にならず、時代考証的な満足感もあって、意外に骨太のしっかりした映画だった。
ただ、原作に関心があっても読んでいなかったので、この映画を、本を読むようにして観ていたのではないか、と今思う。
原田監督はスケールお大きな映画をいつもつくるが、初期の映画のおもしろさとならべて、また味わいのある映画をつくった思った。

監督 原田眞人
公開 2021年11月