映画『返校 言葉が消えた日』


映画『返校 言葉が消えた日』

ひとことで言えば、悲しい映画。
主人公の少女の心象を、あえて言えば、ホラーとして描いているということだろうか。
少女のチャン先生への想いと嫉妬が、あるきっかけで、陰惨な殺戮へとつながっていく。事件は蒋介石の台湾で、共産党に対しての警戒が強かった時代、思想統制が行われているという前提で、自由を信じている教師と生徒が摘発されてむごい死を迎える。
前半は密告者は誰か、という謎解き。中盤から、主人公の生活や、関わる人たちの人間模様が描かれる。この映画に期待して観に行った人は、私と同じように台湾映画に垣間見えるノスタルジックな空気感を期待したかもしれないが、後半にやや報いられるが全体的には薄い。
最後に用意されたオチの場面も、カタルシスにはほど遠い。
もともとゲームを元にした映画だ、と言われればそれまでだが、少女の境遇の悲しさだけが残った。

©hiroshi sano

監督 ジョン・スー
公開 2021年8月