佐野 ヒロシ
(C)「街の上で」フィルムパートナーズ
映画『街の上で』
この映画の評が何日も言葉にならなかった。それほど印象深く、おもしろさも一筋縄ではない映画だ。映画作りが劇中に行われていて、そんな多重構造からの連想は、ホラーコメディー「カメラを止めるな」につながるが、観る方が受けたインパクトは「カメ止め」をしのぐ大事件だ。
約5つの恋話が盛り込まれていると思う。前半散りばめられるそれらの恋の伏線が、後半うまく結実して、多少の映画好きなら観て損はない。
中盤、劇中の映画監督が映画論をちらと語り、場面がかわって、主人公が、ながながしい恋話のやりとりをする場面があるが、それらがワンパッケージだとすると、ここを中心に映画の撮影を進めたのかもしれない、といった、映画を分解する別の楽しみもある。
なによりスゴイのは、登場するすべての脇役のバランスがよくて、あたりはずれが無いということだ。
出だしは、暗い気分の表現だから、うっとうしいが、全体を観れば、面白み満載の映画だと思った。
ただ蛇足ながら、主役の脱力系はこの映画の柱ではあるが、最後まで脱力は、この映画の印象度を時間とともに浸食している気がした。(どこかで、強い見せ場があってもよかったかも)
(h.s)
監督 今泉力哉
公開 2021年4月
評価
4.3/5
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