佐野 ヒロシ
映画『七つの会議』
振り返ってかみしめるとすごい傑作だったのではないかと思えてくる映画だ。出だしは誇張に誇張を重ねた『半沢直樹』の社畜ものシーンからはじまるが、観る側はやや緊張させられながらも、やっぱりそういう映画なのだ、と既視感に上手に誘導される。ところが、映画の本筋は実はそれがいったいなぜだったのか、という謎解きだったのだ。
映画ならではの面白さもここにはあった。凝縮した時間のなかで語りつくすという条件をうまく使っている。過去にもどって謎解き、あるいは種明かし、フラッシュバックはこの映画の最大の強みとなった。テレビでの毎週放送の積み重ねという条件では、大事な伏線も忘れてしまうから、効果もちがったものになっただろう。
出だしで観る側を油断させておいて、謎解きの種明かしが、さらにその奥の種明かしにつながっていく。解きほぐせば、時系列的に一本の糸だが、それを、幾層もの謎解きの面白さに構成していくという、原作と脚本の力がすごい。監督も見る側をその気にさせる度合いを計算しているのが優れている。さらにこれでもかこれでもか、とベテラン俳優が出てくるのも、エンタテイメントの王道を行っている。
そんなにすごい映画なのに、いまいち「傑作」と心から言い切れない霞のような見通しの悪さがのこる。なぜだろう。最後に残されたこの謎をおいおい解いてみよう。
でも、そんな何もかもふくめて、オススの一本かもしれない。(H.S)
監督 福沢克雄公開 2019年2月
評価
4.7/5
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